【ビブリア古書堂の事件手帖】栞子「(時計じかけのオレンジの)旧版と新版では内容に大きな違いがあるんです」

ビブリア古書堂の事件手帖 2」の第一話。
小菅奈緒の妹がアントニイ・バージェスの小説「時計じかけのオレンジ」を読んで書いたという感想文についてビブリア古書堂の店員の五浦大輔に明かした話しについて、店主の篠川栞子に助言を求めたところ、
時計じかけのオレンジ」について栞子は以下のように話しています。

「そこなんです!旧版と新版では内容に大きな違いがあるんです。本文の一番最後のページを見比べてみて下さい」

ビブリア古書堂の事件手帖 2 P52

「アレックスの暴力行為は一過性のものだとバージェスは考えていたようです。彼は大人になって、善悪も自分の意志で選択できるようになる・・・・・・これは若者の成長を描いた物語だったんです。でも、アメリカ版が刊行された時、出版社の意向で最終章は削除されました。
新版が本来の「時計じかけのオレンジ」であり、完全版。

旧版「時計じかけのオレンジ」の最後の文

そして、おれは、ベートーヴェンのきらきらな<第九>と二人だけになった。
ああ、もうケンランゴーカ、ヤムヤムヤムだった。スケルツォの部分に来ると、おれには、はっきりと、すごく軽くてふしぎなノガ(あし)で走って走って、おれののど切りブリトバ(かみそり)で悲鳴あげてる地球の顔全体を切り裂いているところが、はっきり見えるんだ。そして、ゆるやかな楽章になり、そして美しい最終楽章の合唱が、これから来る。おれは、まるっきりなおったんだ。

新版「時計じかけのオレンジ」の最後の文

・・・・・・それでは、みなさんのかわいいドルーグ(ともだち)からさらばだ。それからこの話の中のその他すべてのものにくちびる音楽ブルルルルのすっごいシュームを。そしておれのお尻にキスするがいい。でもみなさん、おおわが兄弟よ、たまには汝のかわいいアレックスのことを思い出してもらいたいな。アーメン。そしてくそくらえだ。

ビブリア古書堂の事件手帖 2 P57〜p58

「え、でも・・・・・・作者はなにもしなかったんですか?」
結末を削られた小説で、自分の名が世界中に知られていくのは、耐えがたい苦痛の気がするが。
「経済的な理由で、アメリカ版の出版を了承せざるを得なかったと言っていますね。ただ、このあたりの事情は複雑で、アメリカの出版社だけに問題があるとは思えません。本国のイギリスでも、一九七〇年代には最終章のない版が出版されていました。日本では長らくこの文庫版が読まれ続けていましたけど、一九八〇年に早川書房から完全版の単行本が出版されたことがあるんです。つまり、完全版と、そうでない版が同時に流通していた事になりますね・・・・・・ところが、完全版の方は数年で絶版になってしまいました」
「・・・・・・完全版が絶版になって、そうじゃない版が残ったってことですか」
「そうなりますね。二〇〇八年になって、ようやくここにある完全版の文庫が刊行され、以前の文庫が絶版になったんです」
俺は腕組みをして二冊の『時計じかけのオレンジ』を見下ろす。なんとも複雑な事情だった。
「バージェスがどちらの版を正統なものと考えているのか、曖昧な時期がありました。不完全な版の出版を差し止められない事情があったのか・・・・・・あるいはバージェス自身も決めかねていたのかもしれません。アメリカで最初に出版された完全版に寄せた序文で、バージェスはこう書いています・・・・・・『わたしたちは書いたものを削除することはできる。しかし、書かなかったことにすることは出来ない』」
時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)

アントニイ・バージェスの『わたしたちは書いたものを削除することはできる。しかし、書かなかったことにすることは出来ない』という話を踏まえて、以下の話が出てきます。

篠川栞子の妹・文香が学校から帰ってきたときの話。

ビブリア古書堂の事件手帖 2 P63

「文ちゃん、お帰りなさい」
と、姉の方が微笑んだ。どういうわけか、杖を持っていない左手を通せんぼのように広げている。どうしたんだと首をかしげていると、篠川文香は小走りに駆け寄ってきて、ぎゅっと姉に抱きついた。背は姉の方が少し高い。
「うわーい、お姉ちゃん!」

そして、妹の文香ちゃんは弟の文也になるのです。
ぎゃあああああ

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